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読む感じる考える

感染症とパラリンピックと私

2021年08月04日

新国立競技場

このコラムでは私がニュースのプロとして目にした様々な出来事から「感じる」ことを取り上げ、人間の真相にあるものを「読み」、そして人生を信じることの意味を「考える」ことを綴っていきたいと思います。

東京2020が決定した2013年9月には、誰もが予想していなかった展開となり
今年7月、オリンピックは開幕を迎えました。
私は2016年、リオデジャネイロでのパラリンピックを視察した日から
報道番組を作る者としてどう東京のオリパラを伝えようか考え、開催を心待ちにしてきました。

なぜなら私はリオでパラリンピックの魅力に開眼し、
東京2020では知られていない「パラアスリートの魅力」を伝えたい
と思い続けてきたからです。

リオで観戦する前は、障がいのある方が「頑張っている」姿に
涙するものだとイメージしていました。
しかし実際に観戦をしてみますと「車いすバスケットボール」はよく知られている競技ですが、
車いすと車いすをぶつけ合いながらボールを奪い合いシュートする姿は、
「バスケットボール」というよりも、「格闘技」に近いと感じるほど実に激しい競技でした。
車いすが転倒しても、なお戦う姿に熱い声援を送りました。

「ゴールボール」は視覚障がいのある方の競技で、ボールにつけられた鈴の音や、足音を頼りに
パスをしたり、ボールを奪い合ったりします。
聴覚が研ぎ澄まされている強みをいかし、その上に日々の練習やトレーニングを経て
代表を勝ち取ってきたのでしょう。こうしたパラアスリートたちを心から応援しました。

こんな夢の舞台が東京に来る前に新型コロナウィルスという想定外の恐怖が世界を襲いました。
実際に新型コロナウィルスに感染した人達を取材しますと、高熱、呼吸困難が目立ちます。
「風邪とは比べものにならない苦しさだった」「ひとあし遅ければECMO(エクモ※)だった」
「完治したあとも味覚嗅覚が戻らない」「完治しても時折体がつらい」そんな声が多いです。

実際にECMOを装着した方は「次に目覚めれば助かったということです。
目覚めないこともあります」と医師に告げられたそうです。
自分も感染をしたらどうしよう、国民の多くがそんな恐怖と戦い、
自分のことに必死になったというのが本音ではないでしょうか。

1年が経ちワクチンは出来たものの、日本は希望する全員が接種を完了する状況に至っておらず、
世界では入手することすら困難な国々もあります。
この中で私は2回の接種を終えられたことを感謝しています。

しかし、接種2回目の際の副反応は非常につらいものでした。
1回目は腕が腫れ痛く少しの倦怠感が数日続いたのみでした。

2回目も当日は何もなく、このまま大丈夫かと思いきや
翌朝から猛烈な節々の痛みと頭痛と高熱が出ました。検温したところ38.7度でした。
その日はほぼ38度台で推移してつらい夜を迎えます。解熱剤も効きません。
しかし翌日昼過ぎには37度台になり、夕方には36度台に。そのまま自力で解熱しました。

3日目も若干の頭痛と体内の熱は感じますが平熱のままでした。風邪とは異なり、
ワクチンが体内を巡り体が異変を察知していくのがなんだか分かるようなプロセスでした。

この経験を通じて、オリンピックの観戦をしていますと
2年近くワクチンを開発し、治療薬もいくつか実用化しつつあるなど、
生きる為に世界が動いてきたたくましさを感じると同時に感謝の念が募りました。

必死にコロナ渦を過ごしていたことで、
逆にパラアスリートの方々の抜きんでた精神力にも想像が及ぶようになりました。

コロナ渦という状況だからこそ、
みんな自分の体と戦ってきたからこそ、
より尊敬出来る強い精神力のパラアスリートを応援したい、
日本はもちろん海外からこのコロナ渦で勇気を持ち来日された全ての選手を応援したい、
そんなことを想いながらワクチンの副作用と向き合いました。

パラスポーツは知られていない競技も多いだけに、
観戦をすればファンになる可能性は広がります。
(オリンピックアスリートのすごさはもちろんですが、
特にパラリンピックファンとしては、という思いですので誤解無きようお願いをいたします)

ぜひみなさんもパラリンピックを観戦してみて欲しいと思います。
きっと学ぶものが多くあります。
リオではたくさんの学生が学校単位で応援に来ていました。

仏教では、頂いている恩に気づく事(知恩)が出来たら、
今度は自分が誰かに恩を送りましょう(報恩)という教えがあります。
つまり、自分が誰かに何かをしてもらったら、
自分の出来る事でその恩を送ることが大切だということです。

オリンピックとワクチン接種で気づかされたことに感謝しつつ、
この気づきの恩を送りたい、私の場合は報道という立場で伝えていきたい、
と思います。

未来を生きる力を得ながらテレビ観戦が出来る大会になることを祈ります。

※ECMO(エクモ):直接血液に酸素を与えることで、体内に血液を循環させるための、
肺に代わる機能をはたす医療機器。究極的な生命維持管理装置といわれる。
(文・大野伸/報道番組 統括プロデューサー)


大野伸(おおの・しん)
日本テレビ放送網(株)報道局にて夕方のニュース番組「news every.」の統括プロデューサーを2018年12月から担当。1996年日本テレビ入社し、報道局社会部で警視庁を担当するなど記者業務に従事。2003年経済部に異動し財務省や経産省を担当。谷垣禎一財務大臣や竹中平蔵郵政民営化担当大臣の番記者を担当。ダイエーや三菱自動車の経営再建取材など民間企業の取材も行う。2008年からは経済部デスクとして多数の企業再建取材の陣頭指揮を行い、ニュース番組での解説者やラジオ番組でのコメンテーターとして解説の現場にも立った。2016年から2018年まで報道局「Oha!4 NEWS LIVE」プロデューサーを務める。最終学歴は早稲田大学大学院政治経済学術院公共経営研究科修了。公共経営修士号を取得。現在も早稲田大学パブリックサービス研究所で研究員を務め、政策コミュニケーションを研究している。本業の合間に企業などでの講演も多数。散歩途中に都心のお寺を巡り歴史に触れること、お寺の清らかな空気に心を癒やされることが趣味。

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