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コロナで変わるもの、変わってはいけないもの

2021年01月20日

韮山反射炉(静岡県伊豆の国市)・筆者撮影

このコラムでは私がニュースのプロとして目にした様々な出来事から
「感じる」ことを取り上げ、人間の真相にあるものを「読み」、
そして人生を信じることの意味を「考える」ことを綴っていきたいと思います。

世界遺産「明治日本の産業革命遺産」に2015年に登録された
静岡県伊豆の国市にある「韮山反射炉」を昨年12月に訪ねました。

時代の転換点で先人達が何を考え、新しい技術を生み出したのか考え、
それがこのコロナ禍の時代へのヒントになるのではと思ったからです。

「反射炉」とは天井に炎や熱を「反射」させることで炉内を高温にし、
鉄を溶解させるものです。

この「反射炉」では1853年にペリーの来航による驚異から
江戸防衛のために蘭書を読み解きながら苦労して大砲などの鋳造を行いました。

この場所で磨かれた技術が明治期の産業革命につながった
ということで世界遺産に指定されたそうです。

当初は下田に建設が進められたものの、
ペリー艦隊の水兵に侵入されたことから
伊豆半島の山の中である現在の伊豆の国市に移築されたそうです。
(以上出典:伊豆の国市HP)

私はこの「韮山反射炉」から学ぶことが
現在のコロナ禍で多数あると感じました。

この炉は幕府存亡の危機を守ろうと国産大砲を作る為に出来たものの、
実際には国を守る強力な大砲とはほど遠いものにしか仕上がらず、
さらに幕府は戦争という選択肢を避けて開国を受け入れるのです。

当初の「反射炉」建築の目的からすれば全くの期待外れだったかもしれませんが、
技術革新は明治の日本の近代化に欠かせない「製鉄」に活用されたわけです。

今回の「新型コロナウィルス」でも
医療分野、サイバー分野、健康管理分野など
たくさんの「コロナ防衛」を目指した技術開発が行われています。

しかし、コロナ対策で健康管理をするための技術は
人を監視することにも応用出来るものが多く、
やがてはその膨大なデータから人の判断の方向性など
脳内の分析や寿命をも予見出来たりすることにつながると指摘する専門家がいます。

このようなSFチックに一見みえる事例だけでなく、
「新型コロナ」に対応する為の膨大な財政出動は、
江戸時代と変わらず無数の新しい技術につながります。

メディアは日々の変化を伝えることにいま追われていますが、
この変革期に人が平和で豊かな将来になるために技術が応用されていくのかという
深い部分もしっかり検証をして、
視聴者が未来を予見する材料を提供することが欠かせないと感じています。

同時にメディアでは「コロナ禍」ということで番組内容のみならず、
取材手法も大きく変化しています。

具体的には「リモート取材」というLINEやzoomなどを活用した
通信動画での取材が当たり前になっています。

確かに「リモート取材」は物理的な距離や国境をも超えることが出来、
コロナ禍でも多くの人から話を聞くことが可能になりました。

同時に移動にこれまで要したコストや時間を大幅に省くことが出来るという
企業効率性からすればプラスとなることも生み出しました。

これはメディアのみならず多くの企業でも同様で、
都心の高いオフィスを縮小することを決める企業、
地方からリモートで仕事をする企業も生まれるようになりました。

しかし、とあるIT業の経営者は
「古きあしき無駄とされた会議や宴会での雑談にも価値があることが分かった、
リモートだけでは革新的な発見は生まれない」と私の取材に答えました。

最先端のIT技術者が集う企業ですら、
アイディアというのは無駄話から生まれることがあると認識をしていることに驚きました。

メディアでも
「取材というのは直接人と接して、顔色を含めて観察し、言外の意味をもくみ取る。
そして取材対象者には日参して雑談から入り懐に飛び込め」
と教えられてきたからです。
これはやはり「リモート取材」では出来ないことです。

コロナ禍ということで外出時間は限られ、
3密を避けて生活をすることが求められている状況ゆえに、
伊豆の静かな山中で歴史を学び、時空を超えて考えるわずかな時間は貴重なものでした。

メディアの立場からコロナ禍の技術革新で変わるもの、変わってはいけないもの、
伝統の中にある本当に大切なものを見極める材料をしっかり提供していきたい
と考えています。

幕末から明治の転換期の人と対話を出来るならしてみたい、
そんな時代を超えるリモートがあるならほしいと妄想したりもしました。

しかし時間すら超えられた時には竜宮城の玉手箱が開く――
人は大きな何かを失うのかもしれません。

あなたはコロナを経て時代はどう変わると思われますか?
(文・大野伸/報道番組 統括プロデューサー)


大野伸(おおの・しん)
日本テレビ放送網(株)報道局にて夕方のニュース番組「news every.」の統括プロデューサーを2018年12月から担当。1996年日本テレビ入社し、報道局社会部で警視庁を担当するなど記者業務に従事。2003年経済部に異動し財務省や経産省を担当。谷垣禎一財務大臣や竹中平蔵郵政民営化担当大臣の番記者を担当。ダイエーや三菱自動車の経営再建取材など民間企業の取材も行う。2008年からは経済部デスクとして多数の企業再建取材の陣頭指揮を行い、ニュース番組での解説者やラジオ番組でのコメンテーターとして解説の現場にも立った。2016年から2018年まで報道局「Oha!4 NEWS LIVE」プロデューサーを務める。最終学歴は早稲田大学大学院政治経済学術院公共経営研究科修了。公共経営修士号を取得。現在も早稲田大学パブリックサービス研究所で研究員を務め、政策コミュニケーションを研究している。本業の合間に企業などでの講演も多数。散歩途中に都心のお寺を巡り歴史に触れること、お寺の清らかな空気に心を癒やされることが趣味。

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