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イベントレポート 不可能と思われた旅の結末は――人々の愛が紡ぐ物語『巡礼の約束』
2019年12月20日

チベット仏教の聖地、ラサへの巡礼を舞台に夫婦、親子の愛を描いた
映画『巡礼の約束』試写会が2019年12月10日、東京都千代田区で行われ、
上映後にはソンタルジャ監督と主演のヨンジョンジャさん
(中国名:容中爾甲(ロンジョンアルジャ)さん)が登壇して、
日本の観客に向け、映画に込めたメッセージを語りました。
ヨンジョンジャ(容中爾甲)さんが演じるロルジェの妻 ウォマが突然、
「五体投地でラサへ巡礼に行く」と告げることから、ストーリーは始まります。
五体投地は、数歩進んでは、五体(両手・両膝・額)を地面に投げ伏して祈る作法。
仏教で最高の敬意を表す礼法とされるが、このスタイルでラサにたどり着くには
半年以上の時間が必要です。
ウォマの実家には、前夫との息子、ノルウを心を閉ざした状態で残しているのに、
なぜウォマは突然に、あえて困難な巡礼を決意したのか……
淡々としたストーリー展開ながら、山岳地帯の厳しい自然、
高原の石造りの家、色鮮やかな民族衣装、お酒を勧めるときの歌など
日常の文化や美しい風景とともに、「愛」や「約束」の重さが胸に迫ります。
ソンタルジャ監督にとって、日本公開作品は『草原の河』に続き2作目。
一方、ヨンジョンジャさんは中国全土で知られる歌手。
彼は監督から主役のオファーに、当初は「自分には俳優経験がない。
初めての演技でこの作品の世界を壊したくない」と断ったといいます。
舞台あいさつで、ソンタルジャ監督は
「男にとって許しがたいような嫉妬の気持ちから、それを抑え、
寛容の心への変わっていく姿を素晴らしい演技で表現してくれた」
とヨンジョンジャさんの演技を絶賛。
ヨンジョンジャさんは、
「撮影中は、演技が気になって監督に何度も確かめたが、
まあまあ、というだけで褒められたことはなかった。
監督はいつも子役やロバの演技ばかりをほめていた」
と打ち明け、会場を盛り上げました。
ソンタルジャ監督、ヨンジョンジャさんは、
「チベットに住む人々も日本の皆さんと同じ愛の心、
感情をもっていることを作品を通して知っていただきたい」
と声をそろえ、舞台挨拶を締めくくりました。
映画『巡礼の約束』は、2020年2月8日(土)から
岩波ホール(東京都千代田区神田神保町)をはじめ、全国で順次公開。
★「わげんせ」編集長から一言★
チベットの雄大な自然の中で描かれる、ある家族の物語。感動して涙があふれました。
巡礼=仏教=難しい…という概念は捨てて、ぜひ劇場でご鑑賞ください。
映画『巡礼の約束』公式サイトはこちら